「もうすぐリハ始まりまーす!」
スタッフの声で我に返り、顔を上げて涙を拭った。
「…今から歌う曲は、綾瀬が初めてairとして作った曲なんだ。
作詞も作曲も、綾瀬がやった。」
じっと、亮平くんを見つめる。
「だから、大切に歌ってほしい。
…綾瀬になりきって、綾瀬の想いを歌ってほしいんだ…。」
綾瀬になりきって…。
彼女への、溢れんばかりの想いを…。
届かなかった声を…。
あたしが。
目を閉じる。
スゥッと、心が落ち着いていく。
胸に空気をたっぷりと入れて。
あたしは亮平くんを見据えた。
互いの意志が交じり合い、あたしは照明が眩しいステージの上へと向かった。