「…彼女だったんだ、綾瀬の。」
綾瀬の…彼女…。
嗚呼、綾瀬は彼女を想って歌っていたのか…。
同じ舞台に立つ彼女を想って。
「歌詞も…彼女が書いてた。」
その言葉に、ふとあのとき流れたインタビューを思い出す。
『作詞はベースの亮平さんがされてるんですか?』
『いえ、作詞は…』
…作詞は、大好きな彼女がやってたんだね。
「あいつの歌は…世界一だった。
深くて、なのに透き通ってて。汚れが無くて。ひたむきで。
あいつの歌を聴けば、なんだって出来るんじゃないかって思うくらい…すごいボーカルだった。」
見えない相手を想像する。
「でも…」