「完璧。」



鏡の前に立つ私は、三国紫緒じゃない。



ただの夜の街を歩く不良だ。



時計を見ると、もう7時。



ヤバい、早くしないと夕食ができたって知らせにメイドが来ちゃう。



鞄に携帯と財布を投げ込んで、窓の方へ向かう。



この家には窓や扉が数えきれないほどある。



だから私の部屋にも外につながってる窓があるわけで。



「よっと。」



その窓の外に行けば、家の外に行ける。



そしてそこから少し歩いて一人ぎりぎりはいれるくらいの小さな扉を抜ければ、家の敷地外に出れる。




「よし、出発。」



ここからはバス乗って、電車乗って、歩いていけば夜の街に着く。




誰も私のことを知らない世界へ。