あ~…。
「弁償なんてできるわけないでしょ?!これ二つでいくらだと思ってんのよ?!」
運悪く、今ユリが来ているドレスはユリがデザイナーに特別に頼んだ特注品で、数十万はくだらない。
その上、ブランドものに目がないユリが持っているバッグは世界的にも有名なブランドで、これも安くて二、三十万だろう。
合わせたら100万くらいはいくんじゃないかな?
これはこの子に払えるわけなんてないよね…。
「ユリ、クリーニング代だけでいいじゃない。きっと染みとれるよ。」
「紫緒、あんた何言ってんの?!本当あり得ない!ちょっとあんた、名前と学校は?!」
ユリを落ち着かせようとするけど、そんなのやっぱり無理で、一太くんを指さした。
「原一太、青葉高校一年です。」
でも意外に一太くんは冷静に名前を名乗った。
「ふん!絶対許さないんだから!!」
そう言い捨てて店を出て行ってしまうユリ。
周りを見ると、お客さん全員の視線がこっちに向いていて、シーンとしていた。
「すみません、お騒がせしました。」
私が代わりに頭を下げる。