「こんな夜遅くにふらふらした女の子一人で帰らせるわけにはいかないでしょ~。」
笑顔でそう言うおじさん。
断ろうとしたら、
「てことで唯、お前送ってやれ。」
例の男の子にそう言った。
「い、いいですけど…。」
「いいってよ。だから唯に送ってもらえ、お嬢ちゃん。あ、でもまだ少し仕事残ってるから、ちょっと待っててくれ。」
行くぞ、空と言って部屋を出ていくおじさんと唯君。
初対面の赤の他人にこんな優しくしてくれなくてもいいのに。
でも送ってもらったら私が三国家の人だって知られちゃうし、ばあやから色々言われるだろうし…。
よし、帰ろう。
そう決心して店の裏口のドアに手をかけるとき、ふと思った。
もっと空くんのことを知りたい。
今まで男なんて腐るほど見てきたけど、なぜか唯くんに興味を持った。
だから私はブレスレットを手首から取り、ソファのところに置いておいた。
それはまるで、ガラスの靴をわざとおいていった
嘘つきのシンデレラのように。