「あっ、わりぃ」
指先がちょっと触れただけで 君はそう謝ったね。
「大丈夫……」
ドキドキを隠せないまま、私は小さく答えた。
毎日、背中を見つめてる。
私の前の席に座る君は私の想い人。
先生がプリントを配る瞬間から、胸の高鳴りは隠せない。
ぶっきらぼうに、後ろに手を回す君が私は好き。
学年が上がって、クラスが変わって、君を初めて知った。
『恐い人』
それが君の第一印象。
席が前後になってしまい、とても怯えていた私。
「お前さぁ、俺のこと、嫌いだろ?」
ドキマギする耳に、君はよくそう言ってるね。
きっと、私がいっつもびくびくしているからかな……
ちょっぴり哀しいけど、君と話せるから許せる。
それに後ろの席だったから色んな君を知ることが出来た。
授業中のお昼寝。
テストが解らなくて焦る君。
私が突然、指されたとき助けてくれたのも君だった。
休み時間や放課後になると、必ず来る女の子。
彼女……だよね。
下の名前で呼び捨てだもん。
私には叶わない想い。
でも、君を見つめていたい。
指先が触れる……
そのくらいの幸せは許してください。
君の長いその指に触れる、私の鈍臭い指が唯一の宝物だから……
=fin=