『来た♪』


窓の外の、ブレザーの集団の中に一際輝く彼。


朝の爽やかな光にピッタリなあの笑顔。


軟弱なボクに、あの時差し延べてくれた大きな手。


彼を見ているだけで、すぐにあの日にスリップできる。

…………。

『大丈夫か?』


誰かに背中を押され、階段から落ちそうになったボクを救ってくれたんだ。


あの時から、彼は僕の王子様。


ここは、同性しかいないから恋愛じゃないのかもしれない。


でも、もしボクが女の子だったら、彼に恋したのかな?


「おはよ〜」


ボクの視線に気がついたのか、彼が下から声をかけてきた。


「お、おはよ……」


小声で、しかも引きってるだろう笑顔で答える。


「おっ、加嶋(カシマ)は今日も爽やかだな」


ボクの後ろから、彼の親友が覗き込み叫ぶ。

『そうか…。彼はこいつを見つけて……僕はなんて馬鹿だったんだ……』


作った笑顔が虚しい。

彼の親友は、怪訝そうな顔でボクをいちべつして、去っていった。

『実るんだろうか……』


実ってはいけない想いに、軟弱なボクは押し潰されている。


彼の笑顔が見られるなら……



=fin=