『次は〜◆◎▲駅ぃ〜〜お降りの方は〜〜』

いつもの電車を、降りた俺は、周りの流れに身を任せて改札口に向かった。


出てくるのは溜め息ばかり。


……今日も、頭を下げてばかりの一日だったな……


そんな心の声を打ち消すように、街を歩く。

都会のビル風は、歩き疲れて汗をかいた身体に、冷たく吹き付ける。

「クシュン…」

小さく、くしゃみが出た。


♪♪♪

同時にメールを知らせる、着信音が鳴る。

けだるく携帯を開いた。

『お疲れ様、次のお休みには会えるのかな?』


彼女からのメッセージ。


もう、一ヶ月近く会えていない。


俺の1番大切なものってなんだろう……


企画部に入りたくて、選んだ会社で、営業に回された。


毎回、忙しくて、最近じゃ謝ることにも慣れた。


でも、彼女に会っても、気の利いたセリフひとつも言えない俺……


「………」


返信の言葉を選べないまま、携帯をそっと閉じて、いつもの店の暖簾をくぐる。


「俺が、今もし消えたって哀しむ奴なんかいない………よな」


泡が立つ綺麗な液体を、くたくたの身体に流し込んだ。


人はいつ頃、大人になるんだろう?


誰も皆、悲しみを背負って生きてる。


誰かに愚痴ったって、自分で持っている、荷物は全て消えはしない。


でも、必ず見つけたい。


俺の中に、まだ消えていない大切な"何か"を探して……



勇気がひとつ欲しくて、高台にある公園に足を向けた。


夕方には、美しい夕日が見える。


今は、星が瞬いている。


携帯を開き、さっきの返信をした。


『あぁ、会おう』


俺の人生、まだまだこれからだ。


=fin=