俺はニカの逞しさを信じることにした。



『ニカを孤児院に預けてくれ。』



遺書にその言葉を綴る。



俺が死んだ後、黒犬にシーナが襲われないことは保証できない。



もしそうなってしまえば、二人はすぐさま殺されてしまう。



「………」



ニカへのメッセージを書き始める。



『兎に助けてもらいなさい。』



これが二人を守り、無事合わせる方法だと思った。



そしてーーー



兎が愛を知るチャンスだと信じた。








「…兎」




お前にニカを託す。



希望をお前に託す。



その時が来たら、



もし黒犬がニカの存在に気づいたら、



お前はニカと一緒に旅に出ろ。



鼠はきっとお前を北へと導いてくれるはずだ。



俺の優しい母親代わりのハカゼは俺を少しだけ蘇らせてくれるだろう。



もしそうなったら、俺は俺しか知らないシーナの居場所を教える。



全てを知って、愛を知って、そしてーーー







黒犬を救ってやってくれ。








これが俺にできる唯一のことだ。




この奇跡が起きることをーーー



俺は信じるしかない。









遺書を書き終わり、そっと引き出しにしまう。



窓に近づき、透明なガラスに手を置いた。





「俺は信じている」




世界が救われることをーーー



信じている。