「どうした鷹目、行くぞ」
「あ、ああ…行こっか!兎ちゃん!!」
俺はそれから常に鷹の目を使い、兎の周り半径20㎡を監視し続けた。
絶対に兎は死なせない。
その思いが俺を突き動かしていた。
しかしーーー
「……ちっ」
黒犬の気配が全く読み取れないことに俺は苛立ってもいた。
このままだと、いつ兎が殺されるか分からない。
確実に守るためにはどうすればいいんだ…。
「………」
自分の胸に手を当てる。
俺がーーー
盾になるしかない。
命に代えてでも兎を守るしかない。
実際、俺にとって兎はそれくらい大事な存在だった。
それに、俺はまだ兎に伝えなくちゃいけないことがあった。
ーーーそれは
『愛』で満ち溢れている世界。
こんなにも美しく温かい世界を知らない兎を、俺よりはやく死なせるわけにはどうしてもいかなかった。
俺はーーー兎のために死ぬ、そう決めた。
「…シーナ」
ふと彼女の美しい姿が頭の中をよぎった。
白い肌に艶のあるまっすぐな黒髪。
キリッとした目は照れると柔らかくなり、あの変な言葉遣いも穏やかになる。
俺がいなくなったら…
シーナは一体どうなる?
「……あっ…」
考えた末に出た答えはーーー
一つだけだった。