俺が振り返ると同時に仮面をとる黒犬。
そこにあったのは、12年前からすっかり大人になった顔とーーー
闇に飲まれたような瞳だった。
「変わったな、黒犬」
「お前もな、鷹目」
俺たちは目を合わせるたびーーー
「「はははっ!!」」
声を上げて笑った。
本当に久しぶりだった。
兎と共に生活しながら、シーナを愛しながら、心の奥にいたのはずっと黒犬だった。
そんな黒犬がーーー今目の前にいる。
嬉しくて仕方がなかった。
「お前、大人になったらそんな顔になるんだなぁ黒犬!」
「鷹目こそ、あの頃よりも鼻が伸びたんじゃないか?」
ーーーはははっ!
過去のこと全てを忘れてその時は笑った。
あの頃のようにーーー
腹を抱えて笑った。
「ーーー鷹目」
急に表情を硬くした黒犬に、俺は顔を上げた。
「今日はお前に堂々と宣告しに来たんだ」
「ん?宣告?」
「ああ」
黒犬は目を瞑るとーーー
ゆっくりと開けた。
真っ黒な瞳がまっすぐに見つめてくる。