それは俺が24になってすぐのことだった。
「兎ちゃーんおやすみっ!」
「ったく…もう子供じゃないんだ鷹目。見ているこっちが恥ずかしくなってくるからそんなことを言うのはやめろ」
俺は兎が眠りにつくのを確認すると、こっそりと部屋を出た。
最近仕事が多くてシーナをずっと独りぼっちにしてたからな。
今日こそ会いに行かないとーーー。
「…っ?」
兎と二人で暮らしていた建物を出ると、突然妙な違和感を感じた。
「……え?」
いや、これは違和感ではなかった。
とてつもなく
『懐かしい感覚』だった。
「っ!!」
ふと鷹の目に一人の男が写り込んだ。
黒いスーツを身にまとい、黒い犬の仮面を被っている。
そいつはーーー
背後で俺を見つめている。
「っ……」
正体はもう分かっていた。
「…やあ黒犬。久しぶり」
「久しぶりだな、鷹目」
声を聞いたのはーーー
12年ぶりだった。