「神託を、お前にくれてあげる」

「そんなものは要らない」

 不思議と耳に残る声を振り払うように、シェイスは首を振った。

「あんたが仕える神は、あたしの神じゃない。

 あんたの神からの賜りものは、あたしにとって意味を持たない。

 神託はただの辻占の占手と変わらない。

 なら、欲しがる奴にあげれば好い」

 シェイスの好く響く声が、空間を切り分ける。

 その言葉に、インシアが瞬きした。

 人形じみた容姿にそぐわない、幼い仕草。

 可愛らしいとさえ思えた。

 初めて、人間めいた匂いを感じた。