「イチコって俺様好きだっけ?」


「いや、むしろ嫌いだよ。」






4月。高校生になって2週間が経った。


中学が同じだった腐れ縁の美夜さんに問われてワタシは真顔で答えた。



「…あんた美夜の少女漫画ビリビリに引き裂いたもんね」


「………それは痛い。痛いよ。あの時は悪かったって!!!」



美夜さんの痛い視線が刺さる。

美夜さんの名前ワタシも欲しいです。綺麗な名前だね。


ワタシなんてイチコだよ、イ・チ・コ!!親のネーミングセンスには遺伝を感じるよ。小4の時に学校で飼っていたウサギにワタシはニンジンと命名したのを思い出す…のは今じゃなくてもいいですよね、はい。すいません。


美夜さんがえぐってくるこの痛い話題は美夜さんの好む少女漫画に出てくる俺様男がワタシは大嫌いでその漫画をビリビリに破ったというものだ。


それはもう、心が痛かった。美夜さん、あの時は涙すら出てこない悲しみで放心してたからな。


だがしかし!!!!!!


それは見つけた。ワタシは教室の窓から乗り出すと大きな声でその方をお呼びする。



「むくろくぅ〜ん!!!!!おはようございまぁあ〜すっ!!!!!!」



その方はこちらの方を見ようともせずにそのまま校舎の中へと入って行った。





だけどワタシは逃さなかった。




「美夜さん、聞いた〜??‘‘黙れ”ですって!これはもう今晩のおかずには困らないですよ〜!!!!!」



「聞こえねぇよ、あんたのその耳怖いわ」



…突き刺さる毒が痛いです、美夜さん。