――ご機嫌だね。

お店がそう呼びかけてくる。

目まぐるしく展開されたディスプレイから視線を逸らさずに、あの方に似合う装備を探し続けた。

「……そうですね。とても素晴らしい方ですから」

――素晴らしい? 彼は此処にけちをつけたんだよ?

「謝ってくれたじゃないですか。そんなに根に持たなくても」

――すまないね。そういう性分だから。

  それでも、随分と入れ込んでいるじゃないか。出会ってまだ二回目だよ?

「不思議ですね。どうにも、他人に思えなくて。放っておけないんですよ」

――それはお客様全員にそう思っているでしょう?

「……どうして。あの人には、なぜか、」

――悪いことではないと思うよ。さあ、まずはお仕事だ。

一つは村正。

その刀は室町時代から江戸時代初期、伊勢桑名にて三代続いた刀鍛冶の名で、また、彼らの作り出した一連の作品の銘。

これは村正。その作品は名に恥じない名刀で、鋭い切れ味を持っている。大きく波打つ波紋と、刃の両面の波紋が揃っていることが作刀上の特徴です。

一つは童子切安綱。

室町時代に天下五剣(鬼丸国綱、大典田光世、三日月左近、数珠丸恒次、童子切安綱)に数えられるほどの最高傑作です。

酒呑童子退治の逸話とともに広く知られた太刀は刀身は80㎝、太刀としては標準かやや長めですが古刀らしく波紋は直刃、切先は小切先ですが、当時の刀には珍しく反りは十分で、良く切れたことが想像できます。

どうしてか和風なイメージがあるあの方に、これ以上ないという名刀を。

その無事を祈って、その身を守らせるための護符をつける。

念入りだといわれたけど、本当にそうかなあ?

どうも、これだけでも不安で。