「自分には、やらなければならないことがあります。そのためなら、命だって」

「捨てられる、と言うんだったら。叩きますよ」

「……怪我人でも、容赦なしか。本当、誰かさんにそっくりだ」

「命を粗末にする人なんて、叩かれて当然ですから」

「…………どうして、そこまで無茶をするんですか? そんなに、大切なことなんですか」

「どうだろう。他人から見れば、馬鹿みたいなことかもしれない」

「それをしなければならないんじゃなくて、それを自分がしたいだけだから」

「ある年のことだった。毎年欠かさずに会っていた人が、突然来なくなってしまった。何を差し置いても互いのことを優先していたのに、その年からぱったりと会えなくなってしまった」

――――――それは、どうしようもない傷を負ってしまったから。

「他に好きな人でもできたのか、何か事情があったのか。兎にも角にも、彼女のことが心配で仕方がなかった」

――――――貴方以外に、好きな人なんていない。

「だから、ある年からその場に現れることをやめた。ルール違反ではあるけど、それでも探したかった。仮に傷ついているとしたら、絶対に助けたかったから」

――――――心配は嬉しいけれど、本当に申し訳ないの。
  貴方を、忘れてしまったことが。

「中世の空を探した、オーロラが広がる寒い空も、戦国時代の過去だった。捜し求められる限りの空を、数え切れないほど。待って待って、探して探して、それでも会えなかった」

――――――私は、そんなところには行かなかったから。