私は、レジの中でボーっとしていた。

女の子が言っていた言葉が蘇っては消えていく。

恋の病というけれど、それがどんなものかも知っている。ただ、どうして私がそうなってしまったのか。

会ってから間もないどころか、それほど話した記憶もないのに。

ただ、どうしてだろう。

いつの間にか気になって、知っているような口振りをしていた。

私は、あの人に、昔あったことがあるのだろうか。

ガーッと音が鳴って、自動ドアが開いた。

「あ、いらっしゃいま……っ!?」

「……すみません、救急道具もらえませんか?」

あの人が、傷だらけで入ってきた。

「――どうしてこんなひどいことに」

「いやあ。神々の黄昏とか言うのに巻き込まれましてね。命からがら戻って来れましたよ」

「あれにですか?! まったく、どうしてそんな無茶をするのですかっ?」

「どうして、と言われても」

怪我を治療して、ほっと一息ついてからのことだった。

私は声を荒げて、怪我人だということも失念して怒っていた。