「天都君ってモテるんだ……。」
「うるさいっ。」

 那由多はクスッと笑った。天都君は意外と女子に人気で家庭科でも同じ班になりたい!とアピールしてきた。二人で一組のペアになって調理実習するようで恋い焦がれる女子にとっては絶好のチャンスなんだろうな、と思った。しかも男子は皆互いにペアを組んでしまって天都君だけが残っていた。

「……じゃあ暁君が決めてよー。」
「え?じゃあ……。」

 那由多は何故か天都君と目が合ってしまった。

「颯簷さんとペアになりたいんだけど……。」
「えー?暁優しいね。でもさぁ。颯簷さんって暁君に興味ないと思うよー。」
「そうそう!」

「……遊び人じゃあるまいし。私は別にペア組んでもいいよ。」

 私はそう言って微笑んだ。女子たちは睨むようにこっちを見つめてきた。あーあ……これからちょっとやばいかなぁ……。



「ありがとう、颯簷さん。」
「いえいえ。でも私は料理に厳しいからたくさん働いてもらうよ?」
「お安い御用。」


 嬉しそうにそう言う天都君を見ると昔の思い出が勝手によみがえってくる。その思い出を振り切って私は料理を開始するのだった。