土曜日の事だった。今日の昼御飯を調達しようかと思いスーパーに出掛けようとした時だった。

「あ、おはよう。」
「おはよう。那由多も昼御飯調達?」
「まぁそんなところ。」

 那由多と鉢合わせした。同じアパートだから仕方がない。……と言うよりもいつもより素っ気ない気がする。それに気付いたのか那由多はちょっと微笑んだ。

「いつもは猫被りだから。素はキツいんだ。何か素っ気無かったらごめん。それよりも一緒に買い物いかない?」

 あ、これが素なんだ。そう思うとそっちの方が自然だ。素っ気ない言い方をしていても容姿端麗な彼女には似合ってた。

「それよりも休みの日は一緒にした方が合理的なのかな……。ま、一緒に行こっ。」


 なんだかんだ言って那由多は一部始終猫被りしながら買い物していた。

「那由多って土地勘いいんだね。」
「そうかな?天都君こそ料理上手いの?」
「うーん……得意ではあるんだけど……。」
「うちのクラスの女子はみーんな君を王子さまにしか当てはめてないからね……。」


 那由多はそう言った。確かにクラスの女子は俺に理想像を見立ててちゃんと俺を見てくれない。料理は得意なのに家庭科ではいつも何もやらしてくれない。

「天都君は……記憶力ってあまりない?」
「何で分かったの!?」
「そんな顔してるから。悩みごとないって言うか……能天気そうと言うか。」
「酷い言われようだな……。確かに記憶力はないよ。小学校の事なんか忘れてるし。」

 そう言うと那由多はそっか、と笑っていた。



「あ、今日の買い物の手伝いしてくれたお礼にお昼作るね。カレーでもいいかな?」
「あ、ありがとう。」