「おい。那由多はどこだ?」


 女子をにらんで暁は尋ねた。女子はこっちの存在に気付いたようでハッ!と口を押さえた。


「え……。屋上……。でもちょっとだけです!」
「ちょっとだけじゃねえ!」


 暁は声を荒げた。崇は冷静にこう言い放った。


「お前ら……ただじゃすまねえからな。」
「ひ……酷い!だってあの女が王子様に近付くのに!王子様は私達のものなのに!」


 女子の集団はそう言った。


「―――天都君はあなた達の物じゃない。もの扱いしないでくれる?」


 その声に全員は横を見た。そこには那由多が立っていた。全身濡れていた。


「那由多!」
「……皆は黙ってて。私物凄く怒ってるから。ねえ?あなた。あなたってとても最低ね。」
「あんたが……!」


 バシッンッッ!


 那由多が左手で主犯の女子の頬を打った。


「……外は雪が降ってたわよ。私が助けを呼ばずに……無茶してなかったらあなたは今頃殺人をしてたのよ?」
「無茶?」


 主犯の女子が聞くと那由多は右手を見せた。そこには血まみれの腕があった。


「何も無かったから腕でドアの窓を破って開けたの。後で窓を割ったのを謝るけどあなた達に弁償させとくから。」


 那由多がにっこりと微笑むと女子達が逃げていった。


「那由多……。」


 那由多は少し泣きそうな顔でこちらを見てきた。


「ごめん……。私今日は……皆といれない……。」
「あ……なゆ……。」


 呼び止めようとしたけれど那由多は去っていってしまった。


「那由多、東病院に寄っていけよ。その傷だけは手当てしとけ。」
「……うん、分かってるよ。荷物は暁くんが持っていってくれるかな?」
「え?……分かったよ。」


 ありがとう、と呟いて那由多は帰っていった。