アパートよりは俺達の通っている高校からの方が近い場所に喫茶店があった。昔からあるようで店の雰囲気にも年季が入っている。

「ケーキセット頼も。私はガトーショコラとクリームトッピング大盛りで……オレンジペコのセットで!」
「あ、俺も同じで……。飲み物はアイスティーで。」
「かしこまりました!少々お待ちください。」


 店員さんがにこにこしながらカウンターへ戻っていく。まだ午前中なのでお客さんは少なかった。

「……オレンジペコって?」
「紅茶の種類。アールグレイとかダージリンとかしか飲んだことないでしょ?凄く美味しいんだから!」


 那由多は嬉しそうにそう言った。


「……那由多って紅茶にうるさくてガトーショコラが好きなんだ?」
「うん。ここのは上等なもの使ってるから金銭面の方であんまり来れないの。」
「なのに大丈夫……なのか?」
「……私にとって過去に向き合うことは大切だからちゃんとした所で話したかった。それに好きなものを食べながら話したら少しは明るくなるでしょ?」

 那由多はちょっと辛そうにしながらもそう言った。そう言われると那由多はやっぱり凄いんだな……と感心する。もっと好きなところが増えた気がした。