「え?」
「北條悠紀惠さん。悠紀乃さんの姉は病気で入院していました。ちょうど……悠紀乃さんが屋上に閉じ込められた日に亡くなってしまいました。同時に母親が交通事故でこの世を去りました。二つの悲しみが合わさって傷を負ってしまったのでしょう。」


 それを聞いて暁は黙り込んだ。


「彼女が名前を変えたのには理由があるんです。当時……悠紀乃さんは名前を呼ばれたがらなかったのです。名前を呼ばれると亡き母親と姉を思い出してしまうらしくて……その上あの日の記憶も併せて思い出すそうなので……名前を変えたんです。」


 名前を変えたことはそういう理由があったんだ……。


「でも……悠紀乃さんが天都君に話しかけたりしたのは何か理由があるからだと思いますよ。では、恋が実るといいですね。」


 翔さんはそう言って帰っていった。暁は微笑んで家に戻ることにした。