暁は通っていた小学校の近くの公園にいた 。朝から那由多と鉢合わせすると悪いなと思ってフラフラと歩いていたらたどり着いたのだ。
「おはようございます。」
「あっ……おはようございます。」
何故だか見知らぬ人に声をかけられた。四十くらいの男の人に見える。
「恋の病でしょうかね。」
その言葉に驚いて腰かけていたブランコから落ちてしまう。その人はクスクス笑っていた。
「すみません。初対面でいきなりでしたね。私は東翔(あずま しょう)と申します。ここの近くの病院に勤めています。」
「……医師……ですか?」
「はい、そうです。……恋の病、と言うのは当たっているようですね。」
そう言われ、暁は今までの流れを全部話した。
「……もしかして……そのお嬢さんの名前は北條悠紀乃でしょうか?」
「知ってるんですか!?」
「はい、知っていますよ。……彼女は屋上で危うく凍死するところでしたからね。そうでしたか……彼女は余計に学校に来づらいんでしょうな。」
「……それだけ心の傷は大きかったって事ですか?」
「いいえ……。そうなのでしょうけど……。」
その人は言いづらそうにしながらこう言った。
「彼女には病気で亡くなった姉がいたんです。」