北條悠紀乃。彼女は小学一年の頃まではこの町にいた。けれど小学一年の三月に転校したきり姿を消していたのだ。

「この際だし……全部言った方がいいな。」

 崇は俺達五人をロビーに連れてきて話し始めた。

「俺は北條悠紀乃のいとこで色々聞いてたんだ。……彼女は佐倉心結を中心とするグループにいじめられていたんだ。あることが理由でな。」
「あること?」
「そう。女子たちのお前に対する妬みが彼女へのいじめに繋がってしまったんだよ。元々一人だったから最初は耐えられた。」


 崇はそう言った。

「でも……。」
「その先は私に言わせて。」

 涙目になりながら心結がそう言った。隣で遥も涙目になっている。

「……二月十四日。バレンタインデーの日に……私達……悠紀乃に邪魔されたくなくて……屋上に閉じ込めちゃったの。あの日はとても寒い日で……雪も降ってた。今考えたら私達とっても駄目なことしたって分かる。一歩間違えたら人殺しになることって!」



 三人組と遥はそう言った。崇はちょっと怒っているようだった。


「……邪魔されたくなくて……って何を?」
「バレンタインデーチョコレートだろ。」



 崇は突き放すようにそう言った。


「……心結。メアド教えといて。いつか話し合わないと解決しないことだ。」
「うん……。」