だが。もう食べた瞬間に報われた。ほとんど天都君が作ってくれた事になるメニューだが、とっても美味しかった。

「うう………!王子様の料理私たちも食べたかった……!」

 女子たちの視線は痛かったがそんなの無視だ。

「あー……美味しい。」
「それはどうも。視線が痛いな……。」

 天都君にとっては男子からの視線が気になるらしい。そりゃそうだ。転校初日から高嶺の花として注目されてるのは私だから。

「手大丈夫?」
「ちょっとヒリヒリするかな~。まさかフライパンに手を置いてしまうなんて思わなかった。」
「だからよな。」

 天都君が笑った瞬間に女子達がきゃーーーっ!?と悲鳴をあげた。


「嘘よ!天都君が笑顔を見せるなんてっ!?」
「今まで見せたことが無いのに!」


「……本当?そうだったらペアになれて得した気分になるなぁ。良かった。……ペア組むの誘ってくれてありがと。」

 そう言って微笑んでしまうと今度は男子の方から悔しがるような声が聞こえてきた。

「くぅっ!天都のやつ!羨ましいぞ!うわぁぁぁぁ!」



 そして私と天都君は互いに顔を見合わせた。

「大変ね。」
「お前も大変だな。」

 家庭科は大混乱に終わり、天都君は料理が出来たことに満足していたようだった。