「嘘っ!?暁が料理してる!」
「そっ……そんな!颯簷さん!あんたね…私達の王子様にそんなこと教え込まないでよ!」
女子は悲嘆の声をあげた。那由多は料理に集中しながら聞いていた。
「……料理中は黙って!」
「そんなのどうでもいいじゃない!」
そう言われて後ろから背中を押された。調味料を取ろうとしていたので横向きに倒れてしまう。そして体を支えようとして手を後ろに回り込ませたけれどそこにはフライパンがあって……。
「痛っ!」
ガシャーーーンッ!
フライパンが傾いて中身の炒め物も空中に飛び散った。そして床に落ちていく。
「何事ですか!?」
先生がやって来て私のもとに駆けつけてきた。皿を取りに行っていた天都君もやって来た。
「あ、あの……。手火傷しちゃったので水で応急処置させてください。」
私はそう言って流しに向かって歩き出した。水を流して手に優しく当てる。弱火だったしちょっと手がヒリヒリする程度だ。
「えっと……ごめん。」
「何で天都君が謝るの?別に大丈夫だよ。天都君って王子様って呼ばれてるんだね。」
「うるさいっ。」
「いちいち反応してると女の子みたいだからやめて。炒め物……全部ダメになったから。そこはもう我慢してね。」
というわけで私達の昼御飯はご飯、味噌汁、鯖の味噌煮と少なくなってしまった。