散華

---い、いかん。座ったら終わりじゃ---

　ざ、と足元に刀を突き刺し、踏み止まる。
　が、刺されたほうの足には力が入らない。

　倒れそうになった熊之介の目の前に、どさ、と何かが降って来た。

「こっ古津賀様ぁ！」

　目の前に落ちてきたのは、古津賀の首だった。
　顔を上げると、離れたところで平八郎が二人を相手にしていた。

　気付けば敵も大分少なくなっている。
　平八郎と戦っている二人と、残り二人。
　その二人が、熊之介に駆け寄って来た。

「くっそおぉぉ！」

　熊之介は吠えると、全身の力を振り絞って立ち上がりざま、先に駆けてきた一人に渾身の一撃を見舞った。
　胴を両断され、男は血と臓物を撒き散らしながら転がる。

　そのあまりの勢いに、一瞬後続の男の足が竦む。
　熊之介は、刀を構えて平八郎を見た。

「ええぇぇぇいっ！」

　鋭い気合と共に、平八郎の体（たい）が躍る。
　平素であれば受けた刀ごと相手を割るほどの平八郎の剣だが、背は真っ赤に染まっている。
　初めほどの威力は出ず、だがそれでも相手の右手に斬り込んだ。

「うおぉっ」

　敵が刀を取り落す。
　慌てて腰にあった脇差を抜いたが、男は顔をしかめて、それを左手で構えた。
　右手の親指を飛ばされ、刀が持てないのだ。