「そうじゃな。わしらに出来ることは、それだけよな」

 熊之介も、腰の刀を抜き放った。

「駕籠が!」

 追手の一人が、平八郎たちの背後に目をやり、すっかり小さくなった駕籠を指して声を上げた。
 その一団に、古津賀が、ずい、と進み出る。

「ここは通さん」

 抜いた刀を、ぴたりと相手の眉間につけて言う古津賀に、追手の足は止まった。
 が、次の瞬間には全員が一斉に刀を抜く。
 十五人ほどだ。

---一人五人か……。ぎりぎりじゃな---

 平八郎も刀を抜き、上段に構えた。

「イヤアァッ!!」

 鋭い気合と共に、古津賀が斬り込んだ。
 あまりの速さに、敵が浮足立つ。

 古津賀は素早く正面の男の胴を薙ぎ、一瞬で刀を返して左手の敵の小手を打った。
 悲鳴と血飛沫が上がり、一人が倒れ、一人が後退する。

 敵の塊がばらけたところに、平八郎も斬り込んだ。
 大柄な男の真っ向へ。