そんな事を考えている内に電車は彼女の最寄り駅に着いた。


「ナル?ん?七夢(ななむ)何でいるの?」


「兄貴こそ……何してんの?」


改札を出た所で兄貴と出くわした。


僕のテンション今日一番の下げ幅。


「ん、俺?この前、ナルにここのケーキ屋美味いって聞いたから母さんに買ってってやろうかなって。」


そう言いながら明らかに中身一個しか入ってなさそうな小さな箱を見せる兄貴。


「さすが双子だよね。二人とも考える事同じなんだね。」


「ふうん、七夢も買って帰んの?」


「えっ、ああ……うん、まぁ。」


何とも間が悪いと言うべきかバツが悪いと…言うべきか。


「じゃあさ、お前買ったの母さんにやれよ。俺、これ自分で食いてぇから。」


そう言うなり小さな白い箱を開けて手でケーキを掴むと目の前でひと目も気にせず食べ始める兄貴。


「みぃくん、鼻にクリーム付いてるよ。」


「ん?どこ?」


「ほら、ここ。」


彼女は持っていたハンカチで兄貴の鼻の頭に付いたクリームを甲斐甲斐しく拭いている。


僕はーーー









「しまった、さっきの本屋に忘れ物した。ちょっと戻るわ。兄貴、悪いけどケーキもう一個母さんの分、買っておいてよ。じゃあ。」













ーーーーその場から逃げた。