翠は、テレビを眺めながらタバコをすっていた。
とても綺麗だった。
ふと翠がこっちに振り返った。
ふわり。雪のように優しく微笑み
「心桜出たのか?」
心桜。翠に呼ばれるだけで心臓が飛び跳ねる。胸が痛くなる。
でも、その病気に名前をつけてはいけない。
「うん。翠は入らないの?」
必死に冷静を装う。
「ああ。後で入る。」
「そっか。」
会話が途切れる。
翠はまた、テレビを見る。
なんか…無性にタバコが吸いたいかも。
でも寮に置きっぱなしなんだよね。
…翠に貰お。
「翠。」
「なんだ?」
「タバコちょうだい。」
「ん。」
「ありがとう。」
カシュ。
石が擦れて小さな炎が起こる。
これも、綺麗。
その小さな炎にタバコを近づける。
肺いっぱいに煙を吸い込む。
美味しい…。
タバコの美味しさに浸っていると
「心桜」
翠に呼ばれた。
「なに?」
「歳いくつだ?」
「16になった」
「へぇ。16か。はぁ!?心桜なにタバコ吸ってんだよ?」
え、なにって…。
「美味しいから。」
そう。ただそれだけ。それ以外に理由なんてなくない?
「20からじゃなかったか?タバコ」
「まぁそうだよね。」
「…」
そんなに眉間にしわ寄せなくても…。
「けど、今更やめられないし。ダメかな?」
ここは必殺甘い声+上目遣いをフルに使うべきだよね!
なんて心で思いながら試してみると
「ほどほどにな。」
「うん!」
よっしゃ!
そんな私に苦笑いの翠。
「そうか。16か。見えねぇな。」
「そう?あ、翠は何歳なの?」
18?最高でも20かな。
「24」
にじゅうよん…20+4…24!?
「ほんと?」
「ああ。」
「20弱くらいかと思ってた。」
「20弱ってなんだよ。若く見られるにはいいか。」
翠は笑いをこらえながら言ってきた。
そんなことより私より8歳も上なのにタメ口きいてるし勝手に翠とか呼んでる…。
急に不安になってきた…。
「心桜?」
笑いが収まったらしい翠が私の顔を覗き込んできた。
「あの。。翠じゃなくて翠さんって呼んでもいいですか?」
とりあえず敬語にしたらいいよね。
なんか翠さんってかっこいいかも。
「…心桜。」
「な、なんでしょうか?」
「タメ口でいい。」
「あ、そう?」
「切り替え早いな。」
「けどこれからは翠さんと呼ぶ!」
「俺の話聞いてたか?」
「ばっちり!けど翠より翠さんの方がかっこよくない?」
「よくわかんないけど…。好きなように呼べ。」
翠さん許可降りた!
「ありがとう!」
興奮気味の私と何故か笑ってる翠さん。
そんな翠さんをみて心がポカポカになった。

私達はそれから少しお話をした。
その時間はとても楽しくて、心のポカポカがずっと続いていた。
でも、これがなんなのかはよくわからなかった。