「よし。風呂入ってこい。」
突然言われた。けど、さっぱりしたいし入るか。。
「うん。」
「風呂場はあそこだから。」
「わかった。」
脱衣所で服を脱いでドアを開けると
「ひろくない…?」
そこにはひとり暮らしとは思えない大きさのお風呂が広がっていた。
とりあえず軽く流して浴槽に浸かってみた。
両手両足伸ばしても全然入れる正方形のお風呂。ありえない…。
そういえば、部屋も大きかったな。
親がお金持ちなのかな…。
ん?私、翠のこと何も知らないじゃん。
知らない人の家のお風呂に入ってる私って…。
あれ。私翠に対して拒絶反応出なかった。
お店で働いて治ったのかな。
それとも…翠を信頼し始めてる…?

「そんなはずないか。まぁ、どっちでもいいや。」
そう呟いて浴槽を出る。

どっちでもよくなんてない。
だって信用してもどうせ裏切られるでしょう?
心桜。翠には近づかないで。
傷つくのはあなたよ?
あの、綺麗な顔で今までの人達と同じように最低なことをしてくるかもしれないのよ?
心桜。目を覚ましなさい。
今のあなたは本当の心桜じゃない。
本当の心桜は、誰にも心を開かない子よ。
心桜。心桜!心桜!!

心の中ではもう一人の私が警報を鳴らしている。
でも…。私はもう負けない。
大丈夫。大丈夫。大丈夫。
今の私が本物よ。
私は自分の不安を押し込める。

じゃないと…。私の居場所がなくなってしまうもの。
翠は、私の居場所なの。
唯一私を救ってくれた神様なの。
翠が私を裏切られるはずない。
だから私も翠を信じるの。

そう心に誓ってお風呂場を出る。


・・・・・・・・・・・・・・・

お風呂を出るとすぐ横にバスタオルと可愛らしい紙袋が置かれていた。
紙袋の中を見ると、紫ベースに白のレースがついた下着と翠の洋服らしきTシャツとズボンがあった。
この下着翠が買ったのかな。
ランジェリーショップで下着を選ぶ翠を妄想してみると恥ずかしそうな翠の顔が浮かぶ。
「いいかもしれない。」
なんてどうでもいいことを考えながら体をふいて、下着をつけた。
…サイズがぴったりだ。
どうしてだろ?すごいなぁ。
とりあえず服着よ。
Tシャツがワンピースだ…。ズボンはいらないかな。
そう思ってTシャツだけでリビングに入った。