あの後数人の相手をして、寮に行った。
働くようになってからもう3ヶ月か。
ふかふかのベッドで寝たい。。
男の人と寝るのが当たり前になってくるとこんな、どうでもいいことがしたくなる…。
ぼー。っと男を待っていると、控えめにドアが開いた。
「こんばんわぁ。」
甘ったるい声で挨拶をした。すると…
「は?」
すごく不機嫌な声が聞こえた。
あれ。この声聞いたことある。
上を見上げると…
「!!!」
びっくりし過ぎて声が出ない。
「お前…。ここで何してんだよ。」
「…」
そんな問いかけにも答えられないくらい頭の中はぐちゃぐちゃで。
「ちっ。とりあえず行くぞ。服着ろ。」
意味不明な命令にも抵抗できない。
なんで?なんで?どうして?
そう思いながらも服を着る。
着替え終わるとあの時と同じようにあったかい大きな手で今度は手を掴まれて、手を繋ぐかたちで受付へ向かう。
そして、伊藤さんを呼び
「こいつ、俺のにするから。」
驚いた顔で
「…店長に許可をいただかないと辞めることはできません。只今読んでまいりますので椅子にかけてお待ち下さい。」
そう言って部屋へと消えていった。
・・・・・・・・・・・・・・
「あ、あの。」
「なんだよ。」
「どうして、私を?」
疑問をぶつけてみた。
「なんでだろうな。なんとなくお前がここにいるのが嫌だったんだよ。」
意味がわからない。
「そうなんですか。」
それだけ答えて頭の中で理由を考える。
セフレかな。それとも家政婦的な感じかな。まとまらない考えの渦に完全に飲まれた私は、店長が来て翠と話していることに気づかなかった。
グイッ
「きゃっ」
「帰るぞ。」
は?あ、。店長がいる。満面の笑みを浮かべて。
「アイ、おつかれ。」
「ありがとうございました。」
何がなんだかわからないうちに私は店の外へ。
そこにはいつもみるキラキラのネオンが輝く街。
そのど真ん中を堂々と歩く翠に手を引かれて歩く私。
なんか、さっきからチラチラ見られてるよ。さすがに慣れて気にならなくなった。
ていうか、どこに向かっているのかな。
前を歩く翠を見る。
背、高いな。180cm以上あるかも。
ふわふわと揺れるアッシュブラウンの髪の毛。
一見細そうなのに、しっかりと筋肉がついていてがっしりとした身体。
長い脚。
小さい顔。
切れ長の目。
茶色がかった、愛が溢れている瞳。
薄い唇。
スッと筋の通った鼻。
完璧な容姿。
神様はなんて不平等なんだろう。
自分の足元を見つめながら歩いていると、急に止まった翠に激突してしまった。
「痛い…。」
「前を見てないからだろ。」
と鼻で笑われた。
笑わなくてもいいじゃない。
軽くいじけていると、
「ごめんって。そんな顔しても可愛いだけだ。」
なんて甘い言葉をかけられた。