「さすが役者。」 「そりゃーどうも。 で、体調はどうだ?」 「大丈夫。風邪だよ、こんなの。」 ''風邪だよ''、体調を崩すと父はいつもそう言っていた。 今思えばそれはきっと私達に心配をかけないようにだと思う。 「鈴さん、私ね歌が上手くなったんだよ!」 「詩茉は昔から上手いのにさらに上手くなったのか。」 鈴さんが家に来る日はいつも以上に賑やかだった。 これからも毎日が楽しいんだろうな。 そういつも思っていた。