だが、その表情は一瞬で、またいつもの葵の顔に戻った。 「いいから、喋ってないで、早くやれよ」 「う…」 その顔は、諦めや憂いを綺麗に隠してしまっている。 世話好きのお人よしで、妹に負けている兄の顔をした葵。 こちらの顔が仮面なのだということは、よほど親しい人でなければ分からないだろう。 あたしも、今、知った。