「頭はいいんだから、受験なんてたいしたことないんじゃないの」
「いや、俺、ほとんど毎日塾だし」
ん、とあたしは首を傾げた。
「今日は?」
「今日はサボり」
「なんだ、偉そうなこと言えないじゃん」
葵は嫌そうな顔であたしを見た。あたしのせいだと言いたいのだろうか。
…あたしのせいか。
「違う、俺の場合はドクターストップ」
「やりすぎちゃうのよ、お兄様の場合。放課後も休みの日もぶっ倒れるまで勉強するから」
「ひゃー」
なんだか想像を絶する世界だ。
「それに、女の子からの手紙をダイレクトメールだと思って捨てちゃおうとするし」
「あはははは、最悪だ、それ!」
「…バラすなよ」
葵が顔を手で覆った。
「だから言ったでしょ、顔と頭と運動神経しか取り柄がないって」
ふふふと夢香が笑う。あたしも合わせて笑った。