「そんなことがあったんだ」

話を聞き終わったあたしは目を丸くしてそう言った。

葵は気まずそうな顔をしている。

「ほんっとお兄様は馬鹿というか…頭がいいのに、どうしてこんなんなのかしら。
連絡を貰った時は息が止まるかと思ったわ」

夢香が深々とため息を吐いた。

言葉とは裏腹に夢香は泣きだしそうな顔をしている。

きっと夢香のことだから、内心葵のことを凄く心配したに違いない。


「でも、分かったことがある」

葵が包帯の巻かれた右手を見ながら呟いた。

「何?」

あたしはその呟きに小さく首を傾げる。