彼は今日は椅子に腰をかけ、本を読んでいた。

もちろん窓側の席に。


仕切りで区切られた席には、今日もたくさんの人がいた。



那は彼の席にタオルをおいて、本を探すふりをして彼をまじまじと見た。



改めてみる彼は、それはそれは素敵だった。


文庫本を片手に、めがねをちょっとずらすその仕草はもう那の目を掴んではなさい。





そして、目だけでなく心を掴んではなさいんだ。




目がはなせなくなって、那がずっと立ち止まっていたのに気づいたのか、彼はそっと本から目をはなして、那をみた。



その目は…にらんでいるとしか思えないような、そんな鋭い目だった。