でも、意外。
言葉が乱暴だし、眼付きも怖いからもっと話しにくい人かと思っていたら、こんなお弁当一つにあんな表情してくれるような人だったなんて。
……初対面でキスしようとしました人と同一人物とは思えない。
忘れてしまっているのだろうか、この人。
「お前と結婚したら、これが毎日食べられるわけか」
「ぶっ」
思わずエビを吐きだしそうになったじゃない!

びっくりした。
「なんだ? びっくりするぐらい美味しかったか」
「びっくりしたのは、その発言です」

何を言い出すのかと、冗談にしても心臓が悪い。
「俺は本気だけど? 紡の野郎は会社放り出してすぐに海外へ飛んで行って留守にしてしまう。そんな奴よりは俺が会社を継ぐ方が良いと思ってるし」
「デザインするのが好きでデザイナーになったのに、会社継いだらデザイナーには戻れないんじゃないですか?」

また一口頬張ると、新さんは箸を止めた。

「好きな女と会社を守る為なら――戻れなくても仕方ないかもな」