「…巻いたか?」
俺は職員室の隣にある男子トイレに隠れている。
体育祭で調子乗ったのが悪かった。
真子先輩が見てたから、俺はかっこつけてめちゃくちゃ一生懸命走った。
もともと足はかなり速い方だったからいいとこ見せれたと思う。
でもそれから俺の追っかけが増えた。
今までもいたけど、数人程度だった。それが今では数十人。
毎日逃げるので必死だ。足が速くてよかった。
おかげで真子先輩と会える機会も減ってしまった。
あ~真子先輩に会いたいよ。
そう思って俺はそっとトイレから抜け出した。
キョロキョロしながらいつもの中庭のベンチに向かった。
すると…
「…っ!!」
そこには真子先輩がいた。
正確に言うと、寝ていた。
この前と逆だと思って笑う。
そっと真子先輩の隣に座る。
そして先輩を見る。
白くてきれいな肌。長いまつ毛に赤い唇。
これできっと化粧なんてしてないんだろうな。
風が吹くとフワッと香る甘い香り。
香水って感じじゃない。シャンプーの香りかな。
髪の毛が先輩の顔にかかる。
俺はそっとその髪を先輩の耳にかけた。
自然に笑みがこぼれる。
ずっと…こうしてられたらいいのに。
俺は真子先輩が起きるまでずっと先輩を見つめていた。