ギュッと隼人くんに抱きしめられる。



「ちょっ、隼人くんっ!」



何が何だかわからず、隼人くんから離れようとする。

でも隼人くんは離してくれない。それどころかもっと強く抱きしめられる。



「強がんなくていいよ」



突然耳元でそう聞こえた。

優しい声で。



「強がってなんか…ない」



あたしはキュッと目をつぶって言った。

あたしは強いんだから。一人で大丈夫。

頭の中でそう言い聞かせた。

でも…



「強がってるよ。だって…無理して笑ってるじゃん」



そう言われてあたしはびっくりした。

自分だとちゃんを笑ってるつもりだった。

なのに…どうしてわかったの?



「俺の前では…強がんないで」



そんな事言われたら…。

今までの思いが一気にあふれてきた。

高校に上がる頃、急にお父さんの海外勤務が決まった。

日本にはあたしとお母さんが残るはずだった。

でも、あたしは一人で残ることにした。

だって、お父さんはお母さんがいなきゃ何もできない。

お母さんだって、お父さんの写真とか見ながら泣きそうだし。

だから2人で行ってって言ったんだ。

あたしには秋も啓太もいるから、大丈夫だと思った。

でも、やっぱり寂しかった。夜一人で泣いたりもした。

けれど迷惑かけられない。心配かけられない。

だってあたしが決めたことだもん。

そうやって今までやってきた。

自分は強いんだって、言い聞かせてきた。

けど…



「泣いていいんだよ?」



そう言って隼人くんは頭を撫でた。

もう、あたしの涙はこらえきれなかった。

ポロポロと涙がこぼれる。



「うぅっひっくっ」



「よしよし」



隼人くんはあたしが泣きやむまでずっと抱きしめててくれてた。