「雨止むまで…うちにいる?」
真子先輩が俺の手を掴みながらそう言う。
先輩の手が震えてる。
手が…冷たい。
俺はコクリと頷いた。
「汚いかもしれないけど…」
先輩は家のドアを開けて奥の部屋まで走って行った。
玄関に入って周りを見渡すと、きれいに整頓されいる。
靴箱の上には可愛らしいクマが2匹寄り添ってる。
真子先輩らしいや。そう思って笑う。
すると、奥の部屋からパタパタと先輩が走ってきた。
危なっかしい走り方。
「はい、これで拭いて」
そう言って肌触りのいい花柄のバスタオルを渡してくれた。
「どうぞ、入って」
そう言われて俺は靴を脱いで上がらせてもらった。
リビングに案内される。リビングもキレイだ。
「全然汚くないじゃん」
そんな独り言を言いながら考える。
確か先輩の親って海外に言ってるって言ってたなぁ。
てことはこの家に先輩は一人で住んでるのか。
こんな広い家にひとりって…寂しくないのかな?
「隼人くん」
名前を呼ばれて振り返ると先輩が息を切らしながら何かを持っていた。
さっきから走り回ってるからなぁ。
「これ、お父さんのなんだけど…」
そう言って出してくれたのは男物のジャージ。
「借りていいの?」
聞くとコクンと頷く。
「じゃあ借りるね」
そう言って先輩からジャージを受け取った。
「それより早く真子先輩も着替えてきて!風邪引いちゃうから」
そう言うと先輩はパタパタと2階へ続く階段を上って行った。
俺は先輩のお父さんのジャージを履いた。
少し…いや、だいぶ大きかったから、裾と袖をめくる。
先輩のお父さんはきっと背の高い人だ。
そして着替え終わった頃、コンコンとリビングのドアがノックされた。