ピーンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
「はーい、あら~隼人くん、昨日ぶりねぇ~」
そんなお母さんの声が聞こえる。
隼人くんちのマンションが出来上がったから、昨日引っ越した。
やっぱり寂しい気持ちはあったけど、歩いてすぐだし、お父さんとお母さんも帰って来たし。
だから思っていたより寂しくはなかった。
「へへ、こんにちは!いろいろお世話になりました」
「いえいえ、ちょっと待ってね。真子~!!」
下からお母さんが呼んでる。
分かってるって!
上着を羽織って部屋から出る。
「ごめん!隼人くん!」
あたしはバタバタと階段を降りる。
「もう、真子。もう少し余裕を持って支度しなさい」
お母さんに注意されて少し落ち込む。
「はーい。ごめんね、隼人くん。行こう」
「いいよ、じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、遅くなるなら連絡ちょうだいね」
お母さんはそう言って、ウインクした。
全く、こっちが恥ずかしいよ。
「あっ、あと隼人くん」
お母さんが隼人くんを呼び止めた。
「お誕生日、おめでとう」
そう言われた隼人くんは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます!」
あたし達は家を出た。
でもあたしの胸の中はなんだかモヤモヤしてる。