「…隼人くん」



あたしはベンチに座っている隼人くんを呼んだ。

隼人くんはクルリとあたしの方を向いた。



「真子先輩、卒業おめでと」



そう言ってにっこり笑った。



「ありがとう」



あたしは隼人くんの隣に座った。

3月の、まだ少し冷たい風がそよそよと吹く。




「こうやって、先輩とこの場所で話すこともなくなるんだね」



遠くを見ながら隼人くんがつぶやいた。

それを聞いたら急に寂しくなった。

涙が出た。ポロポロと。

すると隼人くんが笑ってポケットからハンカチを出した。



「俺、先輩に会えてホントに良かった」



そう言ってあたしの流れてる涙をそっと拭く。



「あ、あたしも、隼人くんに出会えてよかっ…」



その瞬間、隼人くんに抱きしめられた。

抱きしめられるのは、何回目だろう。

そして、耳元で



「真子先輩、好き。先輩が大好き」



そう言った。

あたし…やっと言えるよ。



「…あたしも…隼人くんが好き」



そう言うと、隼人くんはそっとあたしを離す。

そして目が合う。



「へへ、やっと言ってもらえた」



隼人くんは頬を少し赤くさせて、優しく笑った。