「じゃあみんな、いつでも連絡してくれよ!さらば!!」
原田先生が泣きながら教室を出て行く。
黒板には大きく、先生の携帯番号と、メールアドレスが書かれていた。
「原田、なに一人芝居してんだよ」
そう言って笑ってる啓太だけど、その目は少し赤い。
「あ~でも高校3年楽しかったなぁ~」
秋がしみじみそう言う。
「うん、楽しかった」
いろいろあったな。
友達もたくさんできたし、先生たちとも結構仲良くなれた。
でもやっぱり高校に入って一番の出来事は、隼人くんに会えたことかな。
そう思っているとスマホが震えた。
メールが一通。差出人は隼人くん。
『終わったらいつものところに来て。ゆっくりでいいから』
それを見て、頬が緩む。
「どうせ松永だろ?早く行ってこいよ」
啓太が意地悪そうに笑ってあたしの頬を突っつく。
それを見た秋が今度は反対の頬をブニっとつまむ。
「い、痛い」
「そうよ、早く行ってきな。あたしたちは先に帰ってるから」
秋がそう言ってニヤっと笑う。
あぁ、この2人にはなんでもお見通しだ。
「うん、行ってくる。えっと、7時に駅前に集合だっけ?」
夜にクラスの打ち上げをやるってさっき委員長が言ってた。
「そうだよ」
「じゃあ、6時半にお前ら迎え行くから」
啓太がそう言って荷物を持つ。
「じゃあね、真子」
軽くウインクをして秋もカバンを持った。
「うん、またあとで」
あたしは2人に手を振った。
こうやってさよならするのも今日が最後。
一応原田先生の番号とアドレスが書かれた黒板を写メった。
そして、あたしは中庭のベンチ。
隼人くんのいるところへ向かった。