12月になって急に寒くなった。
来月には大学のセンター試験が控えている。
あたしの第一希望は家から電車で30分のところにある、北翔(ほくしょう)大学の経営学部だ。
合わせたわけじゃないけど、啓太も北翔大学。
サッカーが強い大学。一応同じ経営学部希望だ。
ちなみに秋は北翔のもう少し先にある、専門学校が第一希望。
デザイン科で、ネイリストの資格を取ると言っていた。
あたしは…まだ将来なにをしたいのか決まってない。
みんな、やりたいことがあっていいなぁ。
コンコン
そんなことを部屋で勉強しながら考えていたら、ドアのノックの音が聞こえた。
「はい」
「俺、隼人だけど」
「どうぞ」
持っていたペンを机の上に置いてそう言う。
ガチャリとドアが開いて隼人くんが顔を出した。
「勉強お疲れ様!紅茶入れたんだけど、飲む?」
いつものように人懐っこい笑顔を浮かべて聞く。
「うん、ありがとう。いただこうかな」
あたしがそう言うと、隼人くんはニコッと笑って部屋に入って来た。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
隼人くんが入れてくれたラズベリーティーの香りが部屋中に広がる。