お父さんとお母さんのお葬式が終わった後、俺たちは桑原さんに聞いた。
『お前らの母さん、妊娠してた』と…。
それを聞いたとき、やっと止まった涙がまた出はじめた。
兄貴もそうだった。
そうお母さんのおなかの中には赤ちゃんがいた。
3か月くらいだったって。
あの事件がなければ、俺もお兄ちゃんだった。
弟か妹のお兄ちゃんになってたんだ。
大樹くんと遊んでいるとそんなことを思い出した。
そして、ポロッと戸川先輩に言ってしまった。
戸川先輩は驚いた顔をして俺を見る。
言ってしまってマズいと思ったけど、その後戸川先輩は優しく笑った。
「…そっか。じゃあ大樹を弟だと思ってさ、たまに遊びに来てやってくれよ」
そう言って俺の頭を撫でる。
「俺、あんま遊んでやれてねぇんだよ。だから、な?」
俺の頭を撫でる戸川先輩の顔はお兄ちゃんの顔だった。
なんだか暖かくて、安心できる笑顔。
俺も思わず笑顔になる。
「…ありがとうございます」
戸川先輩とはお互い真子先輩が好き。
そこではライバルだけれども、本当にいい人。
兄貴にも、戸川先輩にも負けないように、俺も立派な大人になろう。
そう思った。