飛行機の中で樋口に聞いた話は衝撃的だった。
まさか栗原が俺の住んでるマンションに放火するなんて。
栗原は今朝、マンションの周りに灯油をまいてるところを、ランニングをしていた人に見つかったらしい。
でも持っていたライターに火をつけ、そのまま投げた。
あっという間に火が回り、火事になった。
栗原はその場で通報されて、現行犯逮捕になったらしい。
「兄貴っ!」
急いでマンションに向かうと、現場検証をしているパトカーの近くで兄貴を発見した。
「隼人!」
元気そうな兄貴を見て、なんだか涙が出そうになる。
ガラにもなく、兄貴に飛びついた。
「は、隼人?」
それにびっくりしたのは兄貴だ。
だって、俺こんな風に兄貴に抱き着いたことなんてなかったから。
でも俺の震えてる姿を見て、察してくれた。
「…大丈夫だよ。お前を残して死んだりなんかしないから」
そう言って頭を撫でてくれた。
栗原が俺の友達だということを聞いて、警察署に呼ばれた。
学校でのことや、この間の事件のこともしょうがなかったから話した。
栗原本人も放火について認めていて、反省もしてるらしい。
でも放火は犯罪。少なくとも3年は少年院に入れられるらしい。
そして夕方、兄貴と一緒にマンションに戻ってきた。
辺りにはいまだに焦げ臭いにおい。まだ中には入れない。
1階部分が燃えてしまったこのマンションは建て替えなければならないみたい。
それまで、他の住むところを探さないと。