残暑の9月が終わって、あっという間に10月になった。
窓の外を見ると、葉の色が紅葉仕掛けている。
俺はあれから真子先輩とまともに話してない。
いくらメールをしても、電話をしても、先輩は出てくれない。
廊下で先輩を見かけても、すぐに逃げてしまう。
下駄箱で待っていても、ごめんと言って走って行ってしまう。
もう、なんなんだよ。
「はーやと♪最近元気ないじゃん?」
そんな時に限ってコイツがやってくる。
香水のにおいをプンプンさせて。
「花梨が一緒に遊んであげよーか?」
そう言って栗原は俺の手に自分の手を重ねる。
「触るな」
俺は立ち上がって教室から出て行こうとする。
コイツがかかわってることは確か。でも誰に聞いてもわからない。
俺は無意識に中庭のベンチに行く。
ここは俺と先輩との待ち合わせ場所。
最近までここに一緒に座ってたのに…
先輩、会いたいよ。話したいよ。
「…真子、先輩」
一人、そう呟いた。