朝、話し声で目が覚めた。
「隼人くん?」
隼人の名前を呼ぶ、真子ちゃんの声が聞こえた。
そっと目を開けると隼人が真子ちゃんを抱きしめているようだった。
俺はその光景にびっくりして声を上をあげそうになった。
でも…
「両親の、夢…見た」
隼人がそう言ったのを聞いて、俺は落ち着きを取り戻した。
父さんと母さんの夢か…最近見なくなったな。
そう思って耳を澄ます。
「…どんな夢だったの?」
「お墓参りに行ったお礼、あと俺と兄貴が元気そうで良かったって言ってた」
隼人がそう言って俺を見る気配がしたから、俺は急いで寝たふりをする。
俺が起きてるのに気付かず、話を続ける。
「真子先輩の紹介もした」
「あたしの?なんか恥ずかしいなぁ」
真子ちゃんが照れたようにそう言う。
「ちゃんと紹介したよ。俺の好きな人って」
その瞬間、なんだか雰囲気が変わった気がした。
目を開けると隼人は真子ちゃんの肩に手を添えている。
そして
「真子先輩、好きだよ」
2人の顔がゆっくり近づいていく。
あ、ヤバイ、これ以上は…ムリ…
「へっくしゅん!!」
見てられなくて、俺はくしゃみのマネをした。
我ながらうまかったと思う。
「あ~やっぱ山梨は冷えるな。2人ともおはよ~って何朝からそんなくっついてんだよ」
ふわ~とあくびをする。
いや、これも演技だ。俺なかなかの演技派かもしれないと思った。