「…って感じだ」
そう言って桑原さんは小さくなった煙草を、携帯灰皿にしまった。
そしてあたしを見た。その時、
「お、おい!!」
桑原さんはいきなり焦ったように声を上げた。
そりゃそうだ。だって隣であたしはポロポロと涙を流しているから。
だって、あの明るくて、優しい隼人くんにそんな過去があったなんて。
それに賢一さんもだ。あの兄弟にそんな…
「うぅっ」
「な、泣くな!俺が泣かせたみたいじゃねぇか!あ、俺が泣かせたのか?」
そんなことを言いながら桑原さんはポケットからティッシュを出す。
「あ、ありがとうございます」
桑原さんからティッシュを受け取るとチーンと鼻をかむ。
少したってだいぶ落ち着いたあたしを見て、桑原さんは口を開いた。
「でも良かった」
「え?」
いきなりそんなことを言った桑原さんを見た。
「お前みたいに、あいつらを心配してくれる奴が近くにいてくれて良かった」
そう言って立ち上がる。
そしてあたしの頭をぐしゃっと撫でた。
「賢一と隼人のこと、よろしくな」
そう言ってニッと笑った。
桑原さん、見た目と違って本当に優しい人だ。
あたしはコクリと頷いた。